ADL動作で必要な肩関節の角度とは?

肩関節

みなさんは肩関節周囲炎や腱板損傷、上腕骨骨折などの肩関節疾患を治療した経験はありますか?

これらの治療には可動域制限の改善が目的の一つとなりますが、とりあえず最大可動域にできるだけ近づけようと目標を設定し、介入する方もいると思われます。

しかし、患者さんの中には最大可動域まで到達していなくても日常生活を支障なくおくることができている方はたくさんいます。

それはつまり、日常生活動作で必要な可動域を獲得できているからと考えることができます。

では、日常生活動作において必要な可動域は一体どの程度なのでしょうか。

そこで今回は、論文を参考に日常生活に必要な肩関節の角度を紹介していきたいと思います。

日常生活における肩関節角度

今回の論文では66項目のADLタスクが分析されましたが、その中でも日常で頻回に行う動作を肩関節屈曲・伸展・外転・水平内転の各運動方向ごとに抜粋し、紹介してきます。

肩関節屈曲
  • 肩より上の高さの棚に手をのばす、髪をとかす・・・140~142°
  • 後頭部に触れる・・・110°
  • 対側の腋窩を洗う、タイピング・・・93~95°
  • 電話を使用する・・・85°
  • スプーンで食事・・・75~80°
  • 顔を洗う・・・50°
  • フォークで食事・・・35°
肩関節伸展
  • 腰を洗う・・・60~65°
  • 後ろポケットに手を入れる・・・50°
  • 背中のシャツをタックインする・・・45~50°
肩関節外転
  • 手を頭に置く・・・125~130°
  • 髪をとかす・・・125°
  • 電話を使用する・・・80°
  • 側方に手をのばす・・70°
肩関節水平内転
  • 対側の腋窩を洗う・・・116°
  • 髪をとかす・・・86°

こう見ると、日常生活に関しては屈曲角度は最大でも140~142°であれば支障がないことが予想されます。

また、「後頭部に触れる」「手を頭に置く」なども含めた洗髪・洗体動作に関してはどの運動方向においても大きい可動域が必要になるのがわかります。

まとめ

今回のレビューは以下のように解釈でき、臨床で有用することが可能だと考えます。

  • 目標設定
  • 機能レベルの把握

目標設定に関しては、ADL動作に対する基準値を患者さんに伝えることでリハビリの目標が具体的になるだけでなく、患者さん自身も目標までの道のりが明確になることで、リハビリに対する意欲が向上することも期待できます。

また、現時点での実際の角度と照らし合わせることで患者さんが今できないことを把握し、自身の機能レベルを具体的に知ることにも役立つのではないかと考えます。

しかし、ADL動作は周囲の環境やその人の体型などによって人それぞれであり、患者さんの生活環境やライフスタイルなども加味した上で目標を設定しなければならないことを忘れてはいけません。

さらに、個人的な意見としては、獲得したい動作の角度ぴったりを目標にしてしまうと、そのタスクにおいては、常にその人の最大角度を発揮しなければならないため、余裕を持たせた角度(例えば該当角度が140°なら目標は150°など)に設定することで、QOLの向上によりつながりやすいのではないかと思いました。

参考文献

A.M Oosterwijk,et al.Shoulder and elbow range of motion for the performance of activities of daily living: A systematic review.PHYSIOTHERAPY THEORY AND PRACTICE:2017.

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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