肩腱板損傷はよく聞くと思いますが、腱板が損傷すると何が起きるのか?損傷といってもどのような状態を指すのかわからない方もいると思います。そこで今回は、肩腱板損傷について基礎から、重症度、治療法まで解説していきます。
概要
肩腱板損傷(肩腱板断裂)とは、肩の腱板といわれる筋が損傷(断裂)した状態です。主な症状としては、夜間痛・運動時痛、上肢挙上困難、筋力低下などがあります。
原因としては以下の2つに大別されます。
- 非外傷性・・・明確な外傷がなく、繰り返されるストレスによる断裂や退行変性によるもの
- 外傷性・・・転倒や交通事故、スポーツによる受傷など明らかな外傷により発症するも
そのなかでも非外傷性は主に50歳以上の中高年に好発し、肩の痛みや脱力を主訴とすることが多いです。70歳以上では、40%が腱板損傷しているという報告もあります。
しかしその一方で、無症候性の腱板損傷が多いことも特徴です。
腱板とは
腱板とは
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋
この4つの筋肉を総称したものになります。

主に、骨頭を求心位に保つ役割があります。
求心位とは関節の受け皿に向かって安定している状態をいいます。

上の図のように、正常では肩関節を屈曲させた時に、関節がしっかり安定した状態のまま骨頭が肩峰の下を円滑にくぐることができますが、腱板の機能低下が起きると、関節が不安定になり肩峰の下を骨頭がくぐる際に衝突してしまいます。これを「肩峰下インピンジメント」といいます。
重症度
腱板断裂といっても一概にすべて断裂しているわけではなく、断裂の仕方や大きさが異なり、バリエーションは様々です。
まず大きく以下の2つに分かれます。
- 全層断裂・・・腱板の厚みすべてに断裂している状態
- 不全断裂(部分断裂)・・厚みすべてではなく、一部の層のみ断裂している状態

全層断裂の場合、上の図のように断裂部の大きさによって小、中、大、広範囲の4つに分類されます。

部分断裂の場合、上の図のように3つに分類されます。
関節面断裂は、関節側での断裂になります。滑液包面断裂は滑液包側の断裂です。
層間剥離は浅層と深層の間の断裂を指します。
治療法
1.保存療法
不全断裂や小断裂でインピンジメント症状が比較的軽度である場合は、手術をせずに医師による注射や投薬も併用しながら、リハビリで改善を目指します。
2.手術療法
- 鏡視下腱板修復術
内視鏡を使用して、断裂した部分の断端と上腕骨を縫合糸で縫合する手術。術後は縫合部が安定するまで、6~8週間装具での固定が必要になります。 - リバース型人工肩関節置換術・・・修復不可能な腱板損傷に対して行われる手術。肩甲上腕関節をインプラントをboll & socket構造を反転させて、関節窩側に金属製の半球を、上腕骨側にステムおよびカップを設置することで、腱板に依存することなく上肢挙上が可能なのが特徴。
まとめ
今回は肩腱損傷について、腱板の解説から損傷したら起こること、重症度や治療法までざっと解説させていただきました。
このなかでは特に重症度に関しては、実際の患者さんに携わる前にMRIから情報を得て判断することで、疼痛の強さや改善までの見通し、機能予後など今後の治療方針や介入方法を考える際に役立つと思うので、ぜひ覚えておきましょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
菅谷啓之,他:機能でみる船橋整形外科方式 肩と肘のリハビリテーション,文光堂,2019
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