膝が痛くて整形外科で受診したところ、主治医の先生に変形性膝関節症と診断され「手術をしなければなりません」と告げられた…
突然のことなので心の準備もまだできず、とりあえずどんな手術をするのかと思い調べてみると、
大きく分けて「人工膝関節」と「高位脛骨骨切り術」の2種類の手術があることを知ると思います。そうなると、この違いはなんだろう?自分はどっちの手術をするの?と様々な疑問が浮かぶのではないでしょうか?
そんな方々のために、この記事ではそれぞれの手術の特徴や違いの説明はもちろん、理学療法士の視点から術後のリハビリの流れや内容まで、専門用語をできるだけ使わずにわかりやすく解説していこうと思います。
手術に対する理解を深め、安心した状態で手術を受けれるよう一緒に学んでいきましょう。
人工膝関節全置換術じんこうひざかんせつぜんちかんじゅつとは
加齢により膝関節が変形してしまう「変形性膝関節症」や「関節リウマチ」が原因で、膝の軟骨がすり減った状態を人工の部品に置き換えることで解消する手術です。
摩耗した関節面を取り除き、インプラントを大腿骨側と脛骨側に入れます。

インプラントのタイプは様々な種類があり、患者さんに一番合ったタイプを主治医が選択します。膝関節内にある靭帯や半月板は除去されます。
高位脛骨骨切り術こういけいこつこつきりじゅつとは
膝の変形が原因で、膝の内側・外側など一部に体重が集中してしまい痛みが生じている方に対し、脛の骨(脛骨)の一部を切り取って膝の角度を変えることで、体重の負担を減らし、痛みを軽減することを目的とした手術です。
脛骨を切り、角度を調整した後に空いたスペースに人工骨を入れ込み、プレートで固定し安定させます。

この際、関節内にある半月板にも損傷があれば、その半月板の切除または縫合術も並行して行う場合があります。
適応
いずれも変形性膝関節症に対して行われる手術ですが、どちらを行うかは年齢や重症度、関節機能などによって決められます。
以下が適応となる主な条件になります。
人工膝関節全置換術
- 70歳以上で活動性が低い
- 高度なO脚・X脚変形
- 関節内の靭帯が機能せず、不安定性が強い
高位脛骨骨切り術
- 70歳未満で比較的活動性が高い(仕事やスポーツをする)
- 変形が重度でない
- 著しい不安定性はなし
あくまで一般的な内容になります。
現在ではどちらの手術も多種多様な膝の状態に対応できるよう様々なタイプが存在するので、この条件が全てではないと思っていただけるといいと思います。
メリット・デメリット
どちらの手術にもメリット、デメリットは存在します。

人工膝関節全置換術に関しては、
- 早期荷重が可能=入院日数が比較的少なく、廃用(安静による筋力や体力の低下)が起きるリスクが少ない
- 曲げる角度に限界がある(正座やしゃがみが困難)
- 摩耗によりインプラントが劣化してしまうため、20年程度で交換が必要になる
この3点を理由に、活動性が高くない(肉体労働やスポーツをしない)方=高齢者向きとなっています。
反対に高位脛骨骨切り術に関しては、荷重まで一定期間を要するため、入院日数は長くなってしまうものの
- 自身の関節を温存できる
- 人工関節のように構造的な制限がないため、正座やしゃがみ動作が可能
以上のことから、活動性が高い若年者に向いています。
リハビリに関して
ここからはそれぞれのリハビリの流れや内容などを紹介していきます。共通する部分もあれば異なる部分があり、それにより日常での注意点も変わってきます。
人工膝関節全置換術
- 基本的に術翌日から全体重可能
- 膝の可動域獲得を目的とした可動域練習、太ももの筋力upを中心とした筋力トレーニングを実施
- 車椅子→歩行器→杖または補助具なしの歩行と段階的に歩行手段を上げていき、目標となる歩行様式の獲得を目指す
- 階段昇降練習や自宅環境に合わせた動作練習、バランス練習なども実施
- 正座やしゃがみなど無理な範囲で曲げてしまうと、人工関節が脱臼してしまうので注意
高位脛骨骨切り術
- 荷重開始まで数週間かかり、体重の1/2または1/3の荷重期間(部分荷重)を経て全荷重となる
- 部分荷重時は松葉杖を使用し、全荷重になってから補助具なしでの歩行練習が開始
- 膝の可動域獲得を目的とした可動域練習、太ももの筋力upを中心とした筋力トレーニングを実施
- 骨切り部の骨がくっつき、隙間が埋まるまでは、スクワットなどの自重での膝を使ったトレーニングを避ける必要がある
- 階段昇降練習や自宅環境に合わせた動作練習、バランス練習なども実施
まとめ
人工膝関節と高位脛骨骨切り術は、どちらも膝の痛みを改善するための有効な手術方ですが、年齢や膝の状態、生活スタイルによって向いている方法が異なります。
どちらを行うかは手術の特徴から主治医が判断することがほとんどと思われますが、それぞれの特徴を正しく理解することでより快適な毎日への第一歩となります。
また、今後の生活をより快適にするには、どちらも手術後のリハビリが重要になってきます。手術後に痛みが残存しているケースでも、リハビリを行うことで痛みなく生活できる方がたくさんいます。
今回の記事がみなさん、特にこれから手術を控えている方や、受診時に手術の選択を提案されている方にとっての一助となれれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
コメント